ニュージーランド:史上最大規模の抗議

by | 2024年11月22日 | GNVニュース, オセアニア, 政治

GNVニュース 2024年11月22日

11月19日、約4万2千人がニュージーランドの首都ウェリントンで、マオリ人の権利を再定義する条約原則法案に反対するデモを行った。これは平和的な抗議活動「ヒコイ」の一環として行われ、国内史上最大規模のデモとなった。議会では法案提出後、マオリ党議員のハナ・ラフィティ・マイピ・クラーク氏が法案のコピーを真二つに引き裂き、同僚らと共にマオリ人の伝統的な舞踊ハカを披露し、議会は一時閉会となった。現在マオリ人は全人口530万人の内約17%を占めている。

再定義の議論がなされているワイタンギ条約は、1840年にマオリ人がイギリスに統治権を譲渡する代わりにマオリ人の権利と自治を保障する目的でイギリス王室とマオリ人の首長らの間で調印された。建国文書とみなされているが、英語版とマオリ語版に重要な違いがあり、解釈が論争の的となってきた。裁判所とマオリ裁判所の判決のもと、不利な状況にあるマオリ人の権利と特権が数十年に渡って拡大されてきた。

一方で、この特権が非先住民に対する差別を助長しているとの見方もある。与党と連立を組む自由主義政党ACT党の党首デイビッド・シーモア氏は、条約の核心的価値観が社会の分裂を招いたとし、特権の撤回を目指して条約の再定義を提案した。この法案は他党や多くの先住民・非先住民から強く反対されており、成立の見込みは極めて低い。しかし、法案提出によって社会の分断が懸念されている。

マオリについてもっと知る→「ニュージーランドにおけるマオリの歴史と現在

国会議事堂前で行われた抗議集会(写真:Tom Ackroyd / Wikimedia Commons [CC0 1.0])

1 Comment

  1. 村田千織

    国内史上最大規模の約4万人もの人が参加した「ヒコイ」が、平和的な抗議活動として成立している点に驚きました。また、英語版とマオリ語版の条約内容の違いが、長年にわたり社会に影響を与え続けているということも初めて知りました。先住民・非先住民両者の立場の和解の難しさを改めて考えさせられました。

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