悲しげな表情を浮かべる女性。2015年にナイジェリアで撮られた写真だ。同国北部で台頭した過激派組織「ボコ・ハラム」が2015年1月にボルノ州のバガという町を襲い、2,000もの人が虐殺された。その中の一人はこの女性の夫だった。彼女自身も同勢力に拉致された経験を持つ。写真を撮られた当時、5人の子どもを一人で育てていた。
ボコ・ハラムはナイジェリアのみならず、周辺国のチャド、ニジェール、カメルーンでも攻撃を行っており、現在も存続している。しかし日本ではこの紛争が報道されることはほとんどない。GNVではこの事件が発生した2015年から10年間、日本のメディアによる国際報道を収集し、分析してきた。この虐殺と同じタイミングにはフランスでもシャルリエブド社襲撃事件という事件が発生し、17人の犠牲者が出た。日本のメディアは2,000人の犠牲者が出たナイジェリアでの虐殺をほとんど取り上げない一方で、フランスでの事件に大きく注目した。
GNVが集めたデータが示すように、10年後の現在もこのような傾向は変わっていない。アフリカでの武力紛争や人道危機はほとんど注目されず、ヨーロッパでの出来事が大きく注目されている。
GNVが集めた10年分の国際報道データの分析を見る→「10年間の国際報道を振り返る」
そのデータを見る→「国際報道データ:2015〜2024年(朝日新聞、毎日新聞、読売新聞)」
バガでの事件と日本の報道についてもっと知る→「報道されない大事件と報道される大事件」
武力紛争や人道問題関連の報道についてもっと知る→「どの人道危機が人道報道の対象になるのか?」
(写真: Immanuel Afolabi: Conflict and Development at Texas A&M / Flickr [CC BY-NC-ND 2.0])
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