UAE:広範なテロ法濫用

by | 2025年04月25日 | GNVニュース, 中東・北アフリカ, 法・人権

GNVニュース 2025425

20251月アラブ首長国連邦(UAE)当局は、ムスリム同胞団との繋がりが疑われるとして、反体制派とその親族の11名、及び彼らが所有する8社を「テロリスト」に指定した。UAE2014年に制定したテロ対策法では、政府批判を行う個人や団体を客観的根拠なしにテロリストと認定し、死刑宣告を含む有罪判決を下すことが可能となっている。指定された場合、資産凍結・財産没収が即時発動され、リスト上の人物との連絡は終身刑に問われる恐れがある。今回は事前通告や反論の機会も与えられず、企業にとっては突然の重大な経済的損失となった。また、今回指定された内9人は、テロ犯罪で有罪や告発を受けた事例がなく、政治活動や公の場での人権擁護発言すら行なっていない親族まで含まれている。また2人についても疑わしい状況下での判決・告発が指摘されている。加えてテロリストに含まれた8社は全てイギリス登録企業で、亡命中の反体制派またはその親族が所有している。

こうした過度に広範かつ恣意的なテロ対策法の適用は人権侵害にあたり、国内外の反対意見を封じ込めると同時に、家族への圧力で亡命者の帰国を強いる狙いがあるとの見方もある。2024年にも80人以上の人権擁護者と政治的反体制派が裁判にかけられ、43人がテロ犯罪で終身刑、10人が長期刑を宣告され、不当な大量裁判に国際社会の批判が高まったにもかかわらず、当局の強行姿勢は変わっていない。

この背景には、UAE当局がムスリム同胞団を最大の政治的脅威と見なしてきた経緯がある。1928年にエジプトで結成された同胞団は、イスラム主義を掲げながら社会改革や民主化にも取り組んできたため、君主制を維持するUAE体制と対立してきた。特に2010年に始まったいわゆる「アラブの春」以降は民主主義化運動が湾岸諸国にも拡大し、同胞団を支援するトルコ・カタールの存在も相まって、UAE当局の警戒が更に強まっている。

UAEについてもっと知るUAE:小さな地域大国 

ムスリム同胞団についてもっと知るエジプト:政権維持の裏側

アラブ首長国連邦のシェイク・モハメド・ビン・ザイード・アル・ナヒヤーン大統領

(写真:Presidential Executive Office of Russia / Wikimedia commons [CC BY 4.0])

0 Comments

Submit a Comment

Your email address will not be published. Required fields are marked *