ネパール:浮上する王政復活要求

by | 2025年04月5日 | GNVニュース, アジア, 政治

GNVニュース 2025年4月5日

2025年3月末、首都カトマンズで発生した親王制支持デモは大規模な暴力事件に発展し、治安部隊との衝突でジャーナリストを含む2名が死亡し、110名以上が負傷した。この事件には、最後の国王ギャネンドラ氏の関与がある。ギャネンドラ氏は「民主主義の日」として指定されている2025年2月19日、「国家の伝統を守れ」と呼びかけるビデオ声明を発表し、抗議活動を触発した。さらに3月にはポカラからカトマンズに移動し、空港では数千人の支持者が彼を歓迎した。また、宗教儀式を通じて支持層との結束を強化。抗議指導者を自宅に招き「指揮官」を任命したとの政府側証言もある。

2006年までネパールは、シャハ王朝の国王を元首とする立憲君主制国家であった。しかし、1996年から2006年まで続いたネパール紛争で、反君主制の毛沢東主義派(マオイスト)が勢力を拡大。そのため2005年、当時のギャネンドラ国王は毛沢東主義反乱軍を倒すため絶対権力を握ったが、国民の支持を失い、マオイストとの間で和平協定を結んだ。2006年4月には王政が停止され、新政府とマオイストの間で包括的平和協定が結ばれた。その後、2008年に制憲議会が王政の廃止を宣言し、ネパールは連邦民主共和国となった。しかし王政廃止後、13回の政権交代と腐敗、経済苦境が続いた結果、王政支持の感情が強まっている。ただ、王政復活には憲法改定が必要であり、現状では議会内において親王制派政党・ラシュトリヤ・プラジャタントラ党(RPP)は議席の5%未満に留まるなど支持が不足しているため実現可能性は低い。しかしなお元国王の野心と支持者キャンペーンにより親共和派と親君主派の勢力の間の分裂が深まることが懸念される。

ネパールについてもっと知る→「紛争後の正義の行方:ネパール

ジャネンドラ・シャー前国王(左)(2009年)(写真:Ingmar Zahorsky / Flickr[CC BY-NC-ND 2.0])

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