GNVニュース 2024年11月8日
ガーディアン紙の調査で、欧州連合(EU)の農業補助金33億ユーロが2022年フォーブスの富裕層リストにも名を連ねる17人の億万長者の手に渡っていることが発覚した。この補助金は共通農業政策(CAP)の一環で出されており、EU予算の3分の1を占めている。CAPは本来、農家と食料生産の支援、及び環境保護を目的としている。しかし農家と食料生産の支援に関して言えば、既に何千もの小規模農場が閉鎖されており、支援を必要としている農家に補助金が届いていない。これはCAPが所有土地面積に基づいて補助金を給付していることや、補助金の受取人の精査がほとんどないことに起因する。
問題は補助金受給の格差だけではない。CAPは環境保護を目的にしているにも関わらず、2020年の欧州会計監査院によればCAPが農地の生物多様性に貢献している証拠はほとんどない。加えてCAP予算の約80%が炭素集約型動物性食品の支援に充てられており気候の悪化をも助長している。
耕作面積が補助金額に直結するCAPの仕組み上、小規模農家が圧迫されるだけでなく、結果的に環境負荷の大きい大規模農業が拡大し、環境保護の側面は機能していない。環境的に持続可能な農業形態を行っている小規模農家が守られるよう、農業補助金の見直しが求められている。
世界の農業についてもっと知る→「農業と環境:現代農業が抱えるジレンマとは?」
世界の農業と国際報道についてもっと知る→「世界の農業が抱える問題と国際報道」
世界の格差についてもっと知る→「メディアはなぜ急増する世界の格差を報じないのか」

多額の補助金を受け取っていたアグロフェルト(率いてきたのは億万長者の一人、チェコのアンドレイ・バビス元首相)(写真:ŠJů / Wikimedia Commons [CC BY-SA 3.0])
0 Comments