GNVニュース 2025年8月17日
2025年8月、パキスタン政府はテリーク・イ・タリバン・パキスタン(TTP、パキスタン・タリバン)に対する軍事作戦を開始した。両者は2022年6月に停戦協定を結んだにもかかわらず同年11月からパキスタンとアフガニスタン国境での武力紛争が続いている。TTPは、アフガニスタンとの国境付近でのパキスタンの軍事行動への反発として2007年に結成され、独自のイスラム法に基づく首長国の樹立を目的とし、パキスタン軍への攻撃を繰り返しているとされる。
パキスタン政府は多くのTTP指導者や戦闘員がアフガニスタンを拠点にしていると強調し、同政府はTTPが拠点とするアフガニスタン国境地域で度々、軍事作戦を行っている。アフガニスタンがTTPの活動に十分な対策をしていないとパキスタン政府は非難してきた。
今回の軍事作成について、パキスタン政府は住民の犠牲を避け武装勢力のみを攻撃する主張しているが、その軍事作戦で10万人近くの住民が避難を余儀なくされたとみられている。
パキスタンとアフガニスタン国境間で緊張が高まる中、パキスタン政府は「不法滞在外国人政策」として、主にアフガニスタン難民を強制送還する政策を遂行してることを認めた。2023年10月以降、この政策による逮捕や強制送還を恐れた60万人の難民がアフガニスタンへ帰国している。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は正式に認められた難民を迫害の恐れがある国に送還することは人権侵害に値すると懸念する。また、パキスタンの長期にわたる難民受け入れに敬意を示しつつも、国際的保護が必要な難民については強制送還から免除する措置を適用するよう強く求めている。
パキスタンとアフガニスタン国境間で起きているパキスタン政府の軍事作戦と難民の強制送還は国内外の人道上危機を招いている。
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TPPから奪還した高地を守るパキスタン兵(2009年)(写真:Al Jazeera English / Wikimedia Commons[CC BY-SA 2.0])
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