2025年8月3日、イエメン沖で移民を乗せたボートが悪天候の中転覆した。国連移民機関(IOM)によると、ボートは200人以上が乗船していた。そのうち少なくとも96人が死亡しており、30人以上が行方不明となっている。このボートに乗っていたのは、イエメンを通ってサウジアラビアを目指して移動していた移民や難民であると思われ、そのほとんどはエチオピア人であったとされている。
彼らは、経済的・人道的な安定を求めて移動を試みている。エチオピアでは、人々は深刻な貧困状態に陥っており、1,000万人以上が食糧不足に直面している。また、2022年の失業率は18%にも上っており、経済的に苦しい状況に置かれている人も多い。さらに、多くの民間人が政府や反政府勢力から攻撃や性的暴力を受けているという指摘もある。エチオピアは複数の武力紛争を抱えており、現在停戦中のものに関しても、再発する可能性を指摘する声もあり、不安定な状態が続いている。
しかし、エチオピアの国外に出た移民は決して安全な状況にあるとは言えない。船の転覆の他に、彼らの移動を助ける密輸業者が人身売買を行っている可能性がある上に、イエメンでも紛争が起こっている。さらに、サウジアラビアに入国できたとしても同国の国境警備隊に殺害される可能性もある。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、移動を試みた約1,200人のうち少なくとも655人が死亡したと推定しており、移民が殺害を目撃する例も少なくはない。
イエメンへ渡るエチオピアの人々は減少しており、2023年には約96,000人いたが、2024年には約60,000人になっている。しかし移動の過程においても依然として多くの人は人道的に危険な状況下にある。
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イエメン、アビヤン州の海岸(写真:Ahmedxalkatheri / Wikimedia Commons[CC BY-SA 4.0])
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