3億3,000万人に影響を及ぼす砂塵嵐

by | 2025年07月16日 | GNVニュース, 世界, 保健・医療, 環境

GNVニュース 2025715

国連の世界気象機関(WMO)は、「砂塵嵐と闘う国際デー」にあたる712日に、砂塵嵐(※1)についての年次報告書を発表した。この報告書によると、2023年に比べて2024年の粉塵の量自体はわずかながら少なかったものの、砂塵嵐が人々に与える健康的・経済的な影響は増大しているという。年間20億トンもの砂塵が大気中に放出されており、国境を越えて世界150か国以上の33,000万人に影響を与えている。

人々の健康に与える悪影響の例としては、砂塵嵐によって運ばれた微粒子が体内に取り込まれることで心血管疾患が悪化し、毎年700万人もの人々が早期死亡していることなどが挙げられる。具体的な例としては、20254月、イラクでは2日間にわたって同国を襲った砂嵐の影響で、南部地域だけで3,000人以上が呼吸器系の症状を訴えて病院に運ばれたという。このほかにも、経済的な影響として、農作物の不作や、視界不良による道路や空路の閉鎖に起因する人や物の輸送コストの増大などが挙げられる。

このような砂塵の80%以上は中東・北アフリカ地域に由来するものの、大気にのって拡散するため、地球規模で人々に影響を与えている。このように世界中で人々に影響を与えながらも見過ごされてきた砂塵嵐の問題に対して、国連は20247月に「砂塵嵐と闘う国連の10」を宣言した。2025年から2034年までが対象期間となるが、砂塵嵐によってもたらされるさまざまな問題に対する認知度を高めることを目的としている。粉塵排出量の少なくとも25%は土地や水利用にかかる人間の活動に由来しているといわれている。乾燥した土地が砂漠化して砂塵嵐が起こるのを防ぐために、水源や土壌の保護・回復植林などの対策が必要とされている。

1 塵や砂が強風により激しく吹き上げられる気象現象のことで、砂嵐もほぼ同様の意味となる。WMOの報告書において、「sand and dust storm」とされているため、本記事では「砂塵嵐」の呼称を用いる。

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クウェートを襲う砂塵嵐(写真:Kuwait-Ra’ed Qutena / Flickr [CC BY-NC-SA 2.0])

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