GNVニュース 2025年6月22日
2025年6月18日、米国食品医薬品局(FDA)はHIV感染予防が可能な注射薬「レナカパビル」を正式に認証した。経口予防薬の曝露前予防内服(PrEP)が毎日の服用を必要とするのに対し、レナカパビルは半年に1回の注射のみで済む。そのため、毎日の服用の負担や飲み忘れ、頻繁な通院など様々な予防の障壁を克服することができるうえ、非常に高い予防効果があることから、画期的な治療薬として称されている。世界でのHIV感染者数は2023年時点で推定3,990万人にも及び、130万人もの人々が新規にHIVに感染している。アメリカでの承認は世界保健機関(WHO)による世界的な承認にも弾みをつけるとされ、こうした現状からの前進が期待されている。
一方で、国の規制当局の承認が得られたからといって、この製品がすぐに入手できるとは限らない。製薬会社のギリアド社はアメリカにおけるレナカパビルの定価を1人あたり年間28,218米ドルと発表した。しかし、ランセット誌の研究論文によれば、ジェネリック医薬品のレナカパビルの費用は1人当たり35~46米ドルで提供することが可能になると算出し、導入後1年以内に25米ドルまでさげることができると示唆している。国連合同エイズ計画(UNAIDS)はギリアド社に対し、人々が適正な価格でこの薬に迅速にかつ公平にアクセスできるよう、価格引き下げを要請している。
ギリアド社は2024年10月、レナカパビルのアクセスについて「HIVの影響が強く、資源が限られた国」120か国を対象に、ジェネリック医薬品メーカー6社とライセンス契約を締結し、契約したジェネリック企業が医薬品の提供を開始できるようになるまで、これらの国に原価で供給する ことを発表した。しかし、ブラジル、コロンビア、メキシコなど、感染率は高いものの比較的所得が高い国はこの契約から除外されている。また、新薬のライセンス契約の仲介を行う国際機関「医薬品特許プール」(MPP)を介在していないため、流通メカニズムの透明性についても問われている。
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写真:HIV検査の様子(UNICEF Ethiopia / Flickr [CC BY-NC-ND 2.0] )
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