GNVニュース 2025年6月20日
2025年6月20日は「世界難民の日」である。しかし難民支援を含む人道支援は、国際連合の過去最悪の財政難により深刻な状況に置かれている。
2024年12月に国連の人道支援全体の調整を行う国連人道問題調整事務所(OCHA)が主導となって発表した「2025年グローバル人道概要(GHO)」によると、国連を通じて集められる人道支援要請額は440億米ドルであった。この資金額でも1億1,500万人を取り残さざるを得なかったにも関わらず、2025年半ばにしてわずか13%の56億米ドルしか集まっていない。これを受け、OCHAは2025年6月16日、さらに優先順位付けをした「超優先化」戦略を発表した。要請額は290億米ドルに、支援対象は約1億8,000万人から1億1,400万人に絞り込まれている。国連人道問題調整事務次長のトム・フレッチャー氏は「人間の生存の選別(トリアージ)を余儀なくされている」と述べ、限られた資源で最大限多くの命を救うことに全力を尽くすと強調している。
国連食料援助部門では2025年5月時点でに必要であるとしていた額のわずか9%しか資金提供されず、救命援助活動の縮小を余儀なくされている。しかし、世界の飢餓状況は深刻で、食料面から人道支援を行う国連食糧農業機関(FAO)と世界食糧計画(WFP)が6月16日に発表した、「飢餓ホットスポット報告書」によれば、主に武力紛争や気候変動により13カ国・地域において5ヶ月以内に食料不安が著しく悪化する恐れがあるとされている。特にスーダン、南スーダン、パレスチナ、ハイチ、マリは、すでに飢餓寸前の壊滅的な状況にある。
人道支援の中でも難民支援を専門的に担当する国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は6月16日、最も緊急性の高い難民ニーズがある地域での活動維持を最優先しつつ、人件費を約30%削減するため約3,500人の常勤職員削減、数百人の臨時職員の契約終了、世界各地で事務所の縮小・閉鎖を発表した。UNHCRの利用可能資金は10年前とほぼ同じ水準であるが、避難を強いられた難民の数は過去10年で倍増し、1億2,200万人を超えている。
世界の人道支援についてもっと知る→「紛争における死と人道支援の実態」
難民が抱える問題についてもっと知る→「難民:その現状と広がる格差」
国連の財政難についてもっと知る→「国連:資金不足による危機」

UNHCRによる脆弱な難民の輸送支援(写真:IOM / Flickr [CC BY-NC-ND 2.0])
0 Comments