GNVニュース 2025年6月13日
持続可能な開発目標(SDGs)は2025年までに児童労働の撤廃を掲げているが、2024年時点で世界にはなお1億3,800万人の5歳から17歳の子どもたちが児童労働に従事していることが、2025年6月11日国際労働機関(ILO)から報告された。これは子ども全体の約8%に相当し、過去20年で児童労働者数はほぼ半減したものの、目標達成には程遠い状況である。特に5〜11歳の児童労働者数の減少が最も遅れている。また、鉱山や農場、工場における危険な作業をしたり有害物質への曝露、人身売買、性的搾取など、健康、安全、発達を脅かす危険な状況に置かれている子どもは5,400万人にのぼる。
児童労働の背景には、極度の貧困や武力紛争、自然災害、教育機会の欠如など複合的な要因がある。多くの子どもは家族の生計を支えるために働かざるを得ない。産業別では61% が農業分野で、特に5~14歳の子どもの中で割合が高い。地域別で見ると、サハラ以南アフリカは世界の児童労働の約3分の2を占めており、人口増加の影響もあり、絶対数での減少が進んでいない。児童労働者の約3割は学校に通えておらず、これが将来の貧困に繋がり、負のサイクルを生んでいる。
国際児童基金(UNICEF)とILOは、児童労働の根本的な解決には、親や養育者の貧困対策が必要だとしている。そのためには社会保障の強化や親世代への雇用機会の拡充だけでなく、親が十分な収入を得て、子どもが働かなくて済むようにすることが不可欠である。この実現には、フェアトレード等の公正な取引の推進、安全で健康的な労働環境の整備、労働者が集団で声を上げる権利の保障、強制労働の根絶や差別の撤廃などが必要であるとされている。こうした取り組みにより、親世代が搾取されず、働きがいのある人間らしい仕事(ディーセント・ワーク)を確保できる産業構造を築くことが求められる。
さらに、こうした児童労働対策はマクロ経済の枠組みから労働市場改革、産業別戦略に至るまで、社会全体の政策に一貫して取り込まれるべきであるとILOの報告書で指摘されている。世界経済において有利な立場に立つ高所得国は児童労働に繋がるアンフェアトレードに加担しているため、より公平な経済の仕組みに向けて取り組むことが必要ともされている。
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生計を立てるためにガレージで働くバングラデシュの少年(写真:Shawn / Flickr [CC BY-NC-SA 2.0])
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