GNVニュース 2025年6月4日
2025年5月27日、国連防災機関(UNDRR)の報告によると、2001年~2020年で、全世界における災害の直接的な被害額が年間平均で約2,000億米ドルにのぼることが分かった。被害額は年々増加しており、1970年~2000年の約700~800億米ドルから3倍近く増加している。また、間接的な被害を加えると約2兆2,900億米ドルに及ぶことも分かった。これは直接的な被害額の約10倍にのぼっており、災害の影響を過小評価しているといった主張が見られる。
従来の推計では、日常生活や健康、生態系などに及んだ影響が計算に含まれていなかった。しかし、災害の間接的な損失の方が直接的な損失よりも圧倒的に多いため、過小評価に繋がったという。中でも、生態系を含む環境面に及ぼす影響は近年著しく増加しており、2013年と2023年を比較すると3倍以上もの差がある。
特に低所得国では災害による経済的な負担が大きくなっている。2023年を例に見てみよう。自然災害全体の被害額が世界で最も多かった地域は北米でその額は696億米ドルだが、この数字は域内GDPのわずか0.23%に過ぎない。一方で、低所得国で構成されるミクロネシア地域を見ると、この地域では43億米ドルの自然災害の被害額がGDPの半分近くを占めていることも明らかになった。特に低所得国は、高所得国より限られた予算や資源を、長期的な災害対策よりも医療や教育のように人々が即座に享受できるサービスに投資する傾向があるため、災害で一層大きなダメージを受けることとになる。また、災害によって貧困状態が悪化することがある。更にこのような国々では行政機関の政治汚職や政策の実行力など運営面での課題が被害に拍車をかけているようだ。
UNDRRによると、こうした被害額増加による現状に歯止めをかけるには、政府が防災に予算を投じたり、官民一体で保険の拡充などを進めたりすることが求められるとしている。
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2015年にミクロネシアを襲った台風の被害を受けた建物(写真:USAID Asia / Flickr [CC BY-NC 2.0])
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