GNVニュース 2025年5月25日
世界資源研究所が2025年5月に発表した新たな研究によれば、2024年の世界の原生熱帯林の消失は前年比でほぼ2倍になると予想され、過去最高を記録し全世界で670万ヘクタールに達する見込みであることが分かった。また初めて、農業拡大ではなく火災が熱帯林消失の主な要因となり、ラテンアメリカにおいてとりわけその消失は深刻である。
火災による森林破壊の背景として、大規模な牧場や農場では、農地や牧草地への転用を目的とした火入れを行う。しかし、気候変動による干ばつや環境ガバナンスの低下により、これらの火災は制御不能に広がり森林破壊を加速させた。また、農業と牧畜業の拡大、環境規制の執行と監視の弱さ、森林保護よりも土地転換を重視する法的・政治的枠組みも森林破壊の起因と指摘されている。ブラジルに次いで原生林消失面積が拡大したボリビアでは、経済危機など構造的な要因も考えられる。さらに、地方自治体や中央政府からの支援が不十分なうえ、違法な森林伐採などによる火災以外を起因とする原生林の消失も2023年から2024年の間に14%増加したという。
森林破壊は気温上昇と降水量の減少をまねき、結果として火災の原因となる干ばつの頻発に拍車をかけている。こうした森林破壊の主因となっている火災は、水質汚染や煙による肺がん、感染症リスクの増加、煙害と交通インフラへの懸念から学校閉鎖による教育機会の喪失も引き起こすほか、移住を余儀なくされるなど地域社会にも様々な影響を及している。さらに、環境保護の名のもとに焼き畑農業などの伝統的な土地利用を行う先住民に対する不当な差別や責任転嫁、人種的偏見の助長も懸念される。研究者は森林破壊の今日の加速は「世界的な非常事態」であると警鐘を鳴らしている。
南米の森林破壊の背景についてもっと知る→「違法伐採は、未だ人間の手が加わっていないアマゾンの中心まで迫っている:『恐ろしい』研究結果から判明」
環境保護活動における壁についてもっと知る→「ラテンアメリカ:脅かされる環境保護者」

写真:ボリビアにおける森林火災(EU Civil Protection and Humanitarian Aid / Flickr [CC BY-NC-ND 2.0] )
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