GNVニュース 2025年5月14日
国連開発計画(UNDP)は2025年5月6日に世界の人間開発に関する報告書を公表した。この中で言及される指標である人間開発指数(HDI)とは、単純な経済的指標に頼った評価を避けるために編み出された、健康、教育、生活水準の3つの面から人々の開発状況を評価するものである。そして今回UNDPが公表した報告書によると、2024年のHDIの成長は世界中で記録的な低水準であったという。世界のHDIは2020年に始まった新型コロナウイルスのパンデミックにより一時的に後退した。その後は回復傾向にはあったものの、その度合いは予想されていたよりも小さく、特に2024年の成長はパンデミックの例外的な後退を除くと1990年以来の低水準となった。また、このHDIの停滞は、UNDPが区切る世界の6つの地域全てで同様に見られたという。
さらに、ここ数十年縮小を続けていたHDIの高い国々と低い国々の格差が4年連続で拡大を続けていることも明らかになった。この背景には、貿易関係を圧迫する国際的な緊張や、政府の財政収支の悪化による公共サービス投資の減少などがあると考えられている。UNDPは、この状態が続けば世界は不安定化し、分断が進み、経済的・環境的なショックに対応することがますます難しくなると警告している。
一方、この報告書は人工知能(AI)の影響や可能性についても言及している。AIとの競争ではなく協力によりHDIを高めることは可能だとしており、その方策として、人間とAIが相補的に活躍できる土台を作ること、AIの設計段階から開発段階まで人間が主体的に関わること、そして人間がAIを活用できるような性能の開発に注力することを提案している。
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南アフリカの低所得者が集まるタウンシップ(写真:Isabel Sommerfeld / Flickr [CC BY-ND 2.0])
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