GNVニュース 2025年5月11日
世界保健機関(WHO)は2025年5月に発表した報告書で、健康格差の主要な要因は質の高い住宅、教育、雇用機会の不足など、医療分野以外の社会的な決定要因であると新たなデータで裏付け強調した 。健康格差が社会的な勾配や差別に密接に関連しており、差別や疎外を受けやすい立場に置かれた人々の間で特に顕著であると指摘している。
こうした健康の社会的な決定要因は高所得国でも低所得国でも同様に、数十年もの寿命短縮の原因となる可能性もあるといい、最も寿命の短い国と長い国では、平均寿命に33年もの差がある。報告書では、貧困層の子どもは裕福な家庭の子どもと比べて5歳までに死亡する確率が13倍高いとされ、健康の公平性を改善すれば、年間180万人の子どもが救われる可能性があると分析されている。また、2000年から2023年にかけて妊産婦死亡率は全体で40%減少したが、その94%が依然として低中所得国に集中しているという。高所得国においても人種的・民族的な格差が存在しており、特に先住民やマイノリティ、社会的に不利な立場に置かれた女性の死亡率は高い。
2008年の最終報告書では2040年までに健康格差を縮小するという目標が掲げられていたが、今回の報告書でその達成は難しいことが分かった。WHOは、所得格差、構造的差別、紛争、気候変動への対策が健康格差を克服する鍵であると強調し、各国に対して包括的な社会政策の実施と不平等の是正を求めている。
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写真:インド・ムンバイにおけるスラム地域の様子(2005年)(Sthitaprajna Jena / Wikimedia commons [CC-BY-SA-2.0])
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