GNVニュース 2025年5月8日
2025年5月5日、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は2025年4月の1ヶ月間で、パキスタンとイランに住んでいた28万人以上のアフガニスタンにルーツを持つ難民が強制送還あるいは当局からの圧力により追い出され、アフガニスタンに戻されたと発表した。パキスタンでは、2023年に打ち出されたパキスタン不法移民本国送還計画の再開により、4月の間で約14万4千人がアフガニスタンに戻された。彼らの多くが数十年前にアフガニスタンを出国した、あるいはパキスタンで生まれた子どもであり、アフガニスタンで頼るあてがない人も多い。また、所持品のほとんどをパキスタンに置いてきたためにアフガニスタンでの生活に見通しが見えない人もいるが、彼らへの補償は極めて限定的だと指摘されている。
イランとパキスタンは現在それぞれ375万人、175万人のアフガニスタンからの難民を受け入れている。しかし、国民の反移民感情が広がる中で送還の動きは進み、2023年9月以降両国から合わせて300万人もの人々がアフガニスタンに戻されたと推定されている。なお、表向きは不法移民のみを送還の対象としているが、実際には複雑な法制度によりそれ以外の人々もアフガニスタンに戻るよう圧力を受けているという。
また、この大規模な送還はアフガニスタンにも大きな負担となっている。アフガニスタンはすでに貧困が蔓延しており、人口の半分が援助に頼るという非常に脆弱な経済状況に置かれているが、難民の送還の急増は、すでに危機にあるアフガニスタンの状況をさらに悪化させることになると思われる。
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2023年、パキスタンとの国境付近にあるアフガニスタンのトルカムに設営されたテント(写真:UN Women Asia and the Pacific / Flickr [CC BY-NC-ND 2.0])
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