GNVニュース2025年5月3日
2025年4月29日、欧州司法裁判所(ECJ)は、マルタが実施していた「ゴールデン・パスポート」制度が欧州連合(EU)の法律に違反しているとの判決を下した。
タックスヘイブンとして知られているマルタは、2014年に「個人投資家プログラム」としてこの制度を導入し、マルタの不動産への100万ユーロ前後の投資などを条件にマルタ市民権を付与していた。近年多くのアメリカの富裕層から人気があった。マルタ政府はこの制度により2015年以降、14億ユーロ以上の収入を得ている。
その反面、国外での汚職や犯罪で得た可能性のある資金を投資することで犯罪者がEU加盟国であるマルタの市民権獲得、ひいてはEU市民権の獲得をすることを許す懸念がなされていた。実際に市民権を獲得したロシアの元石油幹部の息子であるセメン・ククソフ氏はイギリスにおいて犯罪資金洗浄で有罪判決を受けており、加えて判決後もパスポートが取り消された兆候はない。このように、この制度を通じて租税回避や脱税だけでなく、マネーロンダリング(資金洗浄)や政府の腐敗も助長されていると思われる。
このような背景の元、今回ECJは、ゴールデン・パスポート制度は「加盟国の国籍の付与の商業化、ひいては連合市民権の商業化」に相当し、EUの加盟国の間の相互信頼を損なうものであるとして違反判決に至った。
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