GNVニュース 2025年4月18日
2022年、世界で300万人以上の子どもが薬剤耐性(AMR)関連感染症で死亡したことが、2025年4月に発表された大規模研究で明らかになった。特に東南アジアとアフリカでの被害が深刻で、東南アジアでは約75万2,000人、アフリカでは約65万9,000人の子どもがAMR関連で命を落とした。
AMRは、細菌などの微生物が抗生物質などの薬剤に対して耐性を持ち、従来の治療が効かなくなる現象である。抗生物質は本来、感染症の治療に有効だが、過剰使用や誤用、そして新薬開発の遅れなどが原因で、一部の細菌が薬剤に耐性を持つようになっている。特に小児用の新しい抗生物質の開発は遅れており、子どもへの治療選択肢がさらに限られている。
今回の研究では、「ウォッチ」抗生物質(耐性化リスクが高い薬剤)と「リザーブ」抗生物質(多剤耐性感染症の最終手段)が多くの死亡に関与していることが判明した。2019年から2021年の3年間で、東南アジアでは「ウォッチ」抗生物質の使用が160%、アフリカでは126%増加し、「リザーブ」抗生物質も東南アジアで45%、アフリカで125%増加した。全世界の子どもの死者のうち、200万人はこれらの抗生物質の使用と関連していた。
AMR拡大の背景には、病院の過密、衛生環境の悪さ、感染予防策の不備、診断機器の不足や誤診への懸念からの抗生物質の過剰・誤用、そして国家レベルの監視や抗菌薬適正使用プログラムの不足がある。特に低・中所得国ではこれらの問題が深刻化しており、今後治療選択肢がさらに狭まるリスクが高い。世界保健機関(WHO)や専門家は、AMRの急増が今後の治療を困難にし、さらなる死亡率の上昇を招くと警告している。国際的・地域的な連携による監視体制の強化、抗菌薬の適正使用、予防接種や衛生環境の改善が急務とされている。
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抗生物質(写真:Sheep purple / Flickr [CC BY 2.0])
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