中東と北アフリカ地域でHIV感染者が急増

by | 2025年04月9日 | GNVニュース, 中東・北アフリカ, 保健・医療

GNVニュース 202549

2025年3月28日、国連合同エイズ計画(UNAIDS)は中東と北アフリカのヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染状況に関する報告書を公表した。これによると、2023年のこの地域での新規HIV感染者は23,000人と推計されており、これは2010年の新規感染者数の2倍以上になるという。中でもエジプトは増加が著しく、6倍以上となっている。一方、世界全体で見るとHIVの感染者数は減少傾向にあり、同じ期間で新規感染者数は39%減少した。 

この感染者の急増の背景としては、HIV/AIDS対策への政治的意思の弱さ、不十分な資金に加えて、この地域での紛争や膨大な数の避難民によりHIV対策に割く余力がないことがあると考えられている。なお、資金に関しては2023年に世界で準備されたHIV対策の資金のうち、中東と北アフリカが受け取ったのは僅か1%であり、これはこの地域で効果的な対策を行うために必要な資金の15%に過ぎなかった。また、HIV感染のリスクが高い性産業従事者や性的少数者などに対する偏見や差別、そして抑圧的な法律により、このような人々が適切な予防措置や医療を受けられないことも問題となっている。そしてこの差別によって症状を申告できない感染者もいると考えると、実際の感染者数は推計よりも多い可能性がある。

もし対策が進まなければ、2030年までにこの地域での1年間の新規感染者数は74,000人に増加すると推定されている。これを防ぐために、即座の行動と地域全体の結束、そして地域外からの協力が求められている 

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ヒトのリンパ球にまとわりつく青く着色されたHIV(写真:NIAID / Flickr [CC BY 2.0])

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